『私の芸術はすべて知性から生まれると人は言います。
これは本当ではない ―――――
私が制作するものはすべて情熱によってやったのです。』
(1951年 クーチュリエ神父へ)
<作品紹介>
もし20世紀の画家で誰か一人だけを選べ、と言われたら、私はピカソではなくマティスを選びます。
フォーブから晩年の切紙絵まで、どの時代でも独創性溢れる質の高い作品を残しています。
21世紀ますます彼の芸術は、燦然と輝きを放つことと思います。
版画制作では驚くべき事にカラー作品がわずか2点のみ、他の数百点はすべてモノクロです。
これはマティスが版画分野でタブローの焼き直しではなく、独自の芸術を目指していたことを如実に現しています。
その上技法を熟知しそれに合った作品を制作しているので、本当に駄作がなく、欧米では高い市場性を誇っています。
過去扱った作品をご紹介します。
![]() マティス "ユリシーズ"より 「アイオロス」 |
"ユリシーズ"より「アイオロス」 ソフト・グランド・エッチング 1935年(D.238)
マティス「ユリシーズ」(1935年)
ジェームズ・ジョイスの長編小説『ユリシーズ』の挿絵として制作した6点のソフトグランドエッチングによる作品。 こちらの作品、シンプルな線描で描かれているのですが、それが実にリズミカルでまた不思議な緊張感を醸し出しています。 |
![]() マティス 「チュールのスカートをはいたオダリスク」 |
「チュールのスカートをはいたオダリスク」 リトグラフ 1924年(D.443)
『オダリスクは幸福なノスタルジー、すばらしく生命感にあふれた夢、昼夜のエクスタシーにも匹敵する経験が、気候の賛歌のなかで結びつき、実った結果だった。その恍惚感、崇高な気楽さを、趣がある太陽の色と形象のリズムで表現したいという抗しがたい欲求。』
「マティスは1920年代に制作したリトグラフにおいて、白と黒の華麗な頂点をきわめた。版画は、マティスの最も美しいデッサンと同様の造形的重要性をもっている。当時マティスは、大部分の時間をオダリスクのデッサンに費やしているが、それは豪華な織物、女性の体が作り出す緊張感、オリエントの謎めいた神秘的な雰囲気などを白と黒のヴァリエーションだけで表現できる格好の題材だった。彼はまたあらゆる支持体を使ってデッサンや版画を制作しているが、とりわけリトグラフにおいて、紙の白さと鉛筆の黒だけを用いて、色を使った制作と同様に満足できる作品を完成している。」
こちらの作品はオダリスク連作の中でもよく描き込まれた重厚な作品です。 |
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